不動産コンサルティングという仕事を考える場合、土地の有効活用において「これが最適です!」という提案をすることが求められる。
その能力の根本には、知識も必要だが、当然そこに経験も深く関わってくる。
しかし、その「ベスト」にたどり着くために、もう1つ必要なのは?
英語でいうと「or」
日本語でいうと「もしくは?」という頭のシステムである。
数を出してみる
僕の場合、とりあえず土地の有効活用、もしくは買いたい、売りたいなど相談を受けた場合、様々なことを想定する。
クライアントは「事務所が欲しい」と言ってくる。
単純に「ハイよろこんで!」と2024年に流行った歌のように、事務所を探しにいくだろう。
しかし、僕の場合は話を聞いた段階で、いろなことを考えている。
例えばこうだ。
- 事務所を移転したいのか?
- 事務所を広くしたいのか?
- 事務所を借りて、そこで何をするのか?(法的規制はないか?)
- 何を目的で事務所が欲しいのか?
- 賃貸、もしくは購入なのか?
- 自社ビルが欲しいという選択肢なのか?
- 自社ビル+他フロアは貸して収益物件とするのか?
- 何年くらい使う?一時的?
- 社員が電車通勤なのか、自動車通勤なのか?
- 来客はあるか?無いのであれば、見た目はこだわらなくていいか?

ちょっと考えただけでも、こうしたことを頭に入れて動かしていく。
ざーっと考えうるパターンを想定し、出てくる都度「or(もしくは?」を重ねてシュミレーションをしている。
自分の手札と、クライアントが本当に求めるもの
ここまでくると、今度はクライアントが本当に求めるものを、傾聴しなければならない。
これが「話を聞く」のではなく、傾聴(けいちょう)であるのには理由がある。
実はもう10年以上前になるが、僕は心理カウンセラーになるためのトレーニングを受けたことがある。
その中で、アクティブリスニングというものを学び、仕事の中で活用している。
概略をまとめたサイトがあったので、傾聴について抜粋しておく。
傾聴とは、「積極的傾聴(Active Listening)」は、米国の心理学者でカウンセリングの大家であるカール・ロジャーズ(Carl Rogers)によって提唱されました。ロジャーズは、自らがカウンセリングを行った多くの事例(クライエント)を分析し、カウンセリングが有効であった事例に共通していた、聴く側の3要素として「共感的理解」、「無条件の肯定的関心」、「自己一致」をあげ、これらの人間尊重の態度に基づくカウンセリングを提唱しました。
1.共感的理解 (empathy, empathic understanding)
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。2.無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)
相手の話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずに聴く。相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く。そのことによって、話し手は安心して話ができる。3.自己一致 (congruence)
聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認する。分からないことをそのままにしておくことは、自己一致に反する。出典:https://kokoro.mhlw.go.jp/listen/listen001/ 厚生労働省 こころの耳サイトより
まとめてしまうと、相手の立場に立ち、また相手の話を評価せず、どんどんお話ししてもらうようにし、結論は相手の中にあるものを導き出すのである。
一番儲かるものがベストではない
このように、「or」で自分の手札を増やしておき、クライアントの話を「傾聴」することで、当然パチッとマッチするものがある。
これが、マッチしない場合は、「権利関係」、「法的制限」、「金銭的な内容」のいずれかで、そもそも無理な話となる。
よって、結果として「ではこうしましょう!」というのが、必ずしも「一番儲かるものがベスト」ではない。
もちろん、傾聴を尽くしクラアントの目的が分かっても、その目的が今度は不動産のプロとして問題があると判断する場合は「やめときなはれ」という。
結果として、その提案が「弊社が儲からない場合」もある。(笑
しかし、それは誠実にアドバイスすることが僕の職業倫理なので、商売はうまいとは言えないのかもしれない。
いいコンサルタントは「一番儲かる方法」ではなく、クライアントの目的達成の正しいルートを提案できるものです。